エネルギーは流れ続ける

コラム

エネルギーは流れ続ける

The Journey Never Stops. 旅は続く、より豊かになっていく方向に

By 岩田洋治

エネルギーは流れ続ける

作り置きしていたものをダメにした経験は、誰にだってあると思う。

 

鍋の中のシチューが、カレーが、豚汁が、火を入れず1日放置してしまったために、残念な最後を遂げることになる。生ものは、放っておくと腐ってしまう。知識としてはわかっていても、これまでに何度ため息をついたことだろうか。

 

むしろ不思議なのは、私たちの体だ。同じように生ものなのに、どうして火を入れたり、冷蔵庫に保管する必要がないのだろうか?真夏の炎天下に1日中外を歩いていたので、帰ってきたら手が酸っぱくなっていた、ということはない。

 

流れているからだ。

 

私たちの体は、絶えず代謝している。式年遷宮という言葉を聞いたことがあるだろうか。伊勢の神宮は、20年に一度建て替えられる。もし、建て替えられることがなければ、やがては朽ちていくだろう。

 

私たちの体も同じように、あるいはもっと頻繁に、”建て替え” が行われている。これが代謝だ。おおよそ1年もすると、体のほとんどの細胞が入れ替わる。髪の毛や爪なら、目に見てわかるだろう。しかし、それだけでなく、歯や骨も、眼球も、内臓も、脳細胞も、みんな絶えず入れ替わっている。

 

だから、流れが止まった時には、すなわち死を迎えると、そこから腐り始める。

 

きっと人の意識やエネルギーも、本来は絶えず流れているものだと思う。ただ、生きている限り代謝を続ける細胞とは違って、こちらの方は意識をしていないと、いつの間にか流れが止まってしまう。

 

 

電車に乗って周りを見渡すと、みんな生気がないように感じたことはないだろうか。流れが止まっているからだ。しかも、そのことに気づいていない。いつの間にか止まっていくのだ。私だってきっと、そんな部分を抱えているに違いない。

 

流れが止まらないためには、しっかりと根っこをはる必要がある。まずは、自分自身に深く根っこをおろすこと。そして、他者と深いところでつながること。この時にエネルギーが循環する “系” ができて、流れが持続していく。そんな感じがする。

 

 

人生を旅と考えるのが好きだ。ずっと続いていく感じがいい。どんなに大変なことがあっても、くじけたり、心折れることがあったとしても、旅は続いていく。ただ続くのではなくて、より豊かになっていく。

 

流れが止まることさえなければ、腐ってしまうことはない。どんなに大変なことも、それさえも糧にして、より豊かな方へと旅は続いていく。本来、そんな力を私たち誰もが持っている。

 

そのようなことに気づくことろに、時代が差し掛かっているのではないだろうか。また、そのようなことに気づくために、これまで以上に、互いの存在が必要になると思う。

 

止まることなくエネルギーが流れ続ける系をつくろう。それは一人ではできない。これは本当に大切な人生のテーマだと思う。

岩田洋治

この記事を書いたのは:岩田洋治

1964年生まれ。北海道大学工学部修士課程修了。卒業後は3Mジャパンにて紙オムツ用粘着テープの開発を、日本および米国にて9年間行う。

1998年、父が創立した行動科学研究所に加わり、これまでの仕事とは全く異なる、人と組織のエンパワーメントの支援を始める。

エンパワーメントとは「眠っている力を呼び覚ます」こと。誰の中にも眠っている力があるものの、その力の発揮を阻害しているものもあって、もやもやしている自分の内面が意識化されることで少しずつ変容が進んでいく。深層対話を通して、そのプロセスを伴走している。

2019年12月、行動科学研究所の所長に就任、現在に至る。

関連するコラム Columns

コラム一覧はこちら

各種お申し込みはこちらから